あなたがもらったクリスマスプレゼントで、
一番心に残っているのは、どんなものですか?
リクルートに入って2年目のクリスマスの朝。
営業所の電話が鳴った。
「クリスマスプレゼントだよ」
電話の向こうで、お客さんの声が笑った。
そのお客さんとの出会いは、1年目の終わり。
売れない営業だった私が、
なんとか気持ちを切り替え、地道に営業をしだした頃だ。
たまたま飛び込みで話をすることができた。
こんな大企業と話ができることが嬉しかった。
その会社は、合併直後。様々な見直しをしていた。
社名に始まり、組織・サービス、全てにおいて納期のある中、
必死に戦っている姿が印象的だった。
私の仕事は、拠点間の通信回線を受注することだった。
IBMや富士通といった、大手コンピューター会社もからんだ
ホストコンピューターの一本化を伴う大掛かりなプロジェクト。
情報システムの人たちは、ホテルに泊まり込みで仕事をしていると聞いた。
最初は、話をきかせてもらえるだけで嬉しかった。
システムの知識もないまま、上司を連れていったり、
会社の通信技術者を連れていったり、リポビタンDを届けたりした。
提案をさせてもらえることになって、
毎日、夜中まで社内外の打ち合わせに走り回った。
実際には、ネットワーク図を書く技術者を拝んだり、
差し入れをすることぐらいしかできなかったが…
数社と競合し、直属の部長はあきらめろ、と言った。
あきらめたくはなかった。
うちは、お客さんのために、どこよりも頑張れると思った。
最終提案が終わり、気の抜けた日が訪れた。
当時、バブル真っ只中。
クリスマスイブには、同僚は皆、そそくさといなくなった。
私は、行きどころもなく、営業所でさみしいイブを過ごした。
そんな翌朝、12月25日、9時。
「クリスマスプレゼントだよ。おたくに決めたから」
信じられないくらい嬉しかった。
そして、次の言葉に、身震いした。
「ここがスタートだからね。あなたに任せたんだからね」
頭をガンと殴られた気持ちだった。
どんな厳しい上司の言葉より響いた。
この決定の後ろに、どれだけのプロセスがあったのか。
そして、お客さんにとって、
これからを創っていくことが、どれだけ大事なことなのか。
どれだけの願いが詰まった「任せた」なのか。
受注することしか考えていなかった自分を恥じた。
「仕事は、決まってからが仕事」初めて、仕事の重みを感じた瞬間。
今でも忘れない、クリスマスプレゼントだ。